
1通目 仲西森奈から三浦康嗣へ
当記事は、2026年8月26日にサブスク配信・CD販売が開始された□□□の3曲入りシングル、その3曲目であり表題曲でもある「We See The Light」(以下、当該曲)に関する、契約社員(ボーカル)・仲西森奈と正社員(主宰)・三浦康嗣の往復書簡です。
※「契約社員」とは、2017年9月ごろからその年の暮れあたりにかけて催された□□□の新メンバー募集オーディションに合格した9名のボーカリストの呼称です。契約社員が加入したタイミングで、それまで□□□に所属していたメインメンバー(三浦康嗣、村田シゲ、いとうせいこう)は自らのポジションを「正社員」と自称するようになりました。これら呼称は明確な雇用関係によるものではなく、立場や構造に言葉を当てはめただけのものです。
まず始めに念のため断っておきたいのですが、この往復書簡は当該曲やそのMV及び□□□のプロモーションではありません。当該曲やMVに関して非常に煮えきらない思いを抱えている私(仲西)に対し、三浦さんからの提案でこのような場を設けることになりました。
往復書簡は三浦さんの個人サイト/ブログと弊サイト(当記事)でそれぞれ公開されます。弊サイトでは三浦さんからの応答記事のリンクを当記事に貼っていき、さらなる応答を当記事最下部に追記していく(当記事一本で流れが追える/通読できるような)形で公開していく予定です。三浦さん側の方法は三浦さんにお任せしています。
このやりとりがいつまで、どこまで続くのかはわかりません。1往復だけで終わるかもしれませんし、10往復くらい続くのかもしれません。これは大事なことのような気がするので書き添えておきますが、私そして私以外の、楽曲に参加した契約社員一同は、今回の楽曲参加に際し1円も報酬を受け取っていません(これは最初から提示されていて、参加した契約社員は全員その条件を承諾した状態で楽曲に参加しています)。なのでこの書簡がどう続くか、どう終わるかは気力次第です。しゃらくさいことを言えば矜持次第ということでもあります。
目次
前置きが長くなりましたが、三浦さんへ。早速本題に入ります。
まず当該曲MVに関して。MV制作が決定したタイミング、そしてMVの内容・コンセプトが決定したタイミングや経緯を教えてください。楽曲に参加した私含む契約社員/準メンバーにそれら情報が共有されていなかった理由についてもあわせて教えてください。
今回、私がここまで過敏に反応し情報の開示を求めているのは、当該曲MVがある一定の政治思想・主張・主義・メッセージをかなり直接的に(楽曲に参加した/歌唱を担った面々がみなMVによって示されたそれらの思想を共有していると容易に括られうる形で)描いた映像だからです。これは私がいくつかのマイノリティ(トランスジェンダー、宗教3世……)に属していて、かつ普段から個人としても作家としても明確に距離を取っている表象(たとえば〝デモ〟や〝レインボー/トランスフラッグ〟)があるからでもありますし、そうでなくとも、当該曲に参加した契約社員一同の権利(有り体に言うと内面の多様性や自由)を毀損していると考えます。当該曲及びMVは、参加者が自身の歌唱をどの政治的文脈に接続させるか判断する機会を奪っている。
この記事にも書きましたが、□□□はこれまでも、「聖者の行進」「合唱曲スカイツリー」などの楽曲で音楽面からいわゆる「政治」あるいは「アクション」に結果的にワンタッチしてきたグループです。「聖者の行進」のMVでは4分11秒あたりのタイミングで「〜月5日、日本ですべての原発が、止まります」という街頭スピーチめいた音声が流れますし、「合唱曲スカイツリー」では東京の環状道路/環状線とはべつに、皇居から伸びる放射状の道を「放射線」と名付け、3.11以降の原子力発電所周りのイシューをそれとなく仄めかす造りになっています(「合唱曲スカイツリー」の〝風が吹いてまいりました〟というセリフ部分も、放射能/当時の問題意識を彷彿とさせますね。放射性物質は風に乗って雨に乗って大気を移動するので)。なので、そういう部分に対していまさら(?)深くつっこみたいわけではありません。ただ、「聖者の行進」「合唱曲スカイツリー」あたりの楽曲と当該曲及びそのMVではメッセージや態度の露骨さがまるで違うし、歌唱パートに関わっている「正社員」の面々とそれ以外の面々の関係性も違う。時代の流れ、時の流れ、それらの変化、三浦さんやシゲさんやせいこうさんの加齢、私含む契約社員一同の加齢、それらによる変化、いろいろあるでしょう。大衆意識の変化もきっとある。「もうこの際正直誰でも良いから、このタイミングで戦争反対、平和主義を全面に押し出した曲出してくんないかな。」と思っている人はきっと一定数いる(以前からいただろうけど、年々増えている/声が大きくなっている/過敏に反応されやすくなったような気がする)(私はこういった主張にはまったく同意/共感できませんが)。
私は契約社員一同のことをひとりひとり極めて一方的にリスペクトしています。私が契約社員「一同」を代表するつもりはありませんし、実際できない。みんなのことが私はわからない。なのでこれは勝手にみんなのことを思っているだけですが、いかなる政治思想・主張・主義・メッセージであれ(それが仮に世間で〝正しい〟とされ〝正義〟とされるものであったとしても)政治的な文脈、土俵に、□□□に関わる面々のなかでも「契約社員/準メンバー(つまり下部構造に属している)」と称されるほとんど全員を許可なく引きずり出したという意味で、深刻な話だと思います。もちろんなかには気にしていない人もいるだろうし、実際ここまで敏感に反応しているのは現状、私だけです。そもそも最初から楽曲に参加しなけりゃよかったじゃないか、という反論もあるかもしれない。しかし、参加を決めた時点でMVの構想を知らされていなかった以上、私は自分の歌唱がどのような政治的文脈に置かれるかを踏まえて参加の可否を判断することができませんでした。今回の件はあまりにも一同/各々に対するリスペクトがなく、契約社員を政治的なメッセージの正当性の一部としてただ道具のように利用しているとしか感じません。それが私は、こう言ってしまっていいのなら、契約社員として、□□□のいちリスナーでもある身として、哀しいです。
体制側のプロパガンダやその萌芽には過剰防衛なくらい敏感なのに、反体制/プロテスト行為をしようとしてその手つきが却ってプロパガンダめいてきたり、そばにいる他者を搾取したり毀損したりすることに鈍感になったりするようなら、いまいちど立ち止まり、何度も深呼吸してほしいです。これは私の勝手なお願いです。
それと、単にアイデアのひとつとして思ったことでもあるのですが、当該曲のコンセプトが〝デモ〟や市井の人々の〝生活〟であるなら、この曲に参加することにした人たち(契約社員やその他の面々)のインタビュー記事等をまずプロモーションとして打ち出したほうが良かったのではないでしょうか。□□□というグループとしての(三浦康嗣名義ではなく□□□名義で当該曲を出すことによる)態度のようなものと、当該曲のコンセプトと、メンバー構成と各々の声の大きさが、今回はすべて矛盾しているように思います(朝日新聞の記事やインタビュー、その他メディアのインタビューも一通り読んだ上での感想です)。せいこうさんの「わたしたちの生活を返せ/それも正しく」「それであなたたちはなんて、なんて、なんて、なんて言う?」などの朗読にいまいちシラケてしまうのは、詰問される側(You)の矛盾や瑕疵にばかり唾を飛ばし言い募るあまり、詰問している自分たち(We)の矛盾や瑕疵がガバガバになっているからだと思います。端的に言ってダサい。かっこわるいです。
初回で長くなりすぎるのもお互いにとって負担だと思うので、1通目はここらへんにします。最後に当該曲MVに関する希望・要望と、今回の書簡での質問をまとめます。
【希望・要望】
①当該曲MVのYouTube概要欄に、当記事のURLを貼ってください。
https://morinakanishi.com/fao_kuchiroro/
②今後私がライブに出演する機会があるとして、そして当該曲をセットリストに入れるとして、私は当該曲を歌わず、その場に棒立ちするか舞台からはけます。その選択を認めてください。私以外の契約社員が同様の申し出をした際にも、その人自身の選択を認めてください。
③当該曲MVのYouTube概要欄に、「I See The Light」のURL を貼ってください。
https://youtu.be/p-r2wlYw3lg?si=i8XT_G_zYkyndXXr
もしくは
https://morinakanishi.com/log21/
※上記は①から順に強く希望します(③はできたらでいいです)。
【質問】
① MV制作はいつ、誰の発案で決定したのか。
② 内容・コンセプトはいつ、誰が決定したのか。
③ ①・②に際し、なぜ歌唱参加者/契約社員一同に事前の共有や意思確認を行わなかったのか。
④ 参加者の歌唱が映像内の主張への賛同として受け取られる可能性を、制作側は検討したのか。
※答える順序等は三浦さんにおまかせします。
これを読んでいる三浦さん以外の人たちへ
最初にもすこし書きましたが、すくなくとも私側がこの往復書簡を書いて応答を続けていくことは、□□□の契約社員として、また仲西森奈という個人/作家としての気力や矜持で成り立っています。綺麗事だけでは続けられませんし、正直やってられません。今回の件で私を知った人もいることでしょう。よければ拙著を買ってください。こことかこことかここで買えます。『ホームページ』って本がいまのところの自己ベストです。このサイトもなかなか個人で張り切っているサイトなので、知らねえデカい公園を通り抜けるような気持ちであちこちページを覗いてみてください。
ライブでは「いつかどこかで」の「今夜も眠れずTwitter Twitter Twitter mixi〜!」あたりを主に歌っている
仲西森奈
2通目 三浦康嗣から仲西森奈へ
https://koshimiura.net/blog/260902
3通目 仲西森奈から三浦康嗣へ