シークエンス1-3

  • 0049 カーセックス(8)

    カーセックス(8)

     ケリー・オハラまで30km、という電光掲示板が眼前で宙に浮いているのを見てジョナスは運転席で大きく上下に身体を揺らす。サイバネティック・ベイビーと名付けたフランケンシュタインをデフォルメしたぬいぐるみが後部座席から助手席まで跳び上がってきてウッディー・ウッドペッカーみたいな引き笑い。幼いころ、祖母の病室にいつも飾ってあったポインセチアと話していた、死後の世界の空想そのままのディテールに笑っていいのか怖がったほうがいいのかわからないけれど不思議と冷静にハンドルを握っていて、ジョナスはただただ、いま、煙草が吸いたい。と思ったそばから3本目の腕がジョナスの左肩甲骨から生えてきて、伸び続けて、時速120キロでだだっ広い一本道を走り続けるジャガーXJソブリン3.2-V8のシルバーの天井をそのままぶち抜いて数キロ先の煙草畑に到達したジョナスの3本目の腕が天使に接近遭遇して、天使がその骨張ったジョナスの第3の手の甲に、やさしいキスをするまで、あと3秒、2、1。