シークエンス1-3

  • 0019 カーセックス(5)

    カーセックス(5)

     ピューはハンディカム、モチヅキはハンドルをそれぞれ握りしめて、車は夜の千本通を徐行している。白昼堂々がモチヅキの信条だし、ピューも同感だった。だから夜は声をかけたりはしない。スモークフィルムの貼られた窓から、飲み会帰りの学生、警察官、閉め作業中のラーメン屋、スーツ姿の男性、女性、そういう人たちを盗み撮っていく。ピューは喋らない。モチヅキも喋らない。ラジオも音楽も流さない。モチヅキは左手をハンドルから離して、前を向いたままピューの頭を撫でた。瞬間、ピューの息が止まって、それからすぐ、静かに深呼吸をした。モチヅキの手はあたたかい。