シークエンス1-3

  • 0009 カーセックス(1)

    カーセックス(1)

     ブラホックってやつはなんでこんなにまだるっこしいのだろうとトモキはいつも思う。背中に回って、もしくは最初からケイコに後ろを向いてもらって、ホックと正面から向き合えば簡単に外れるのに。でもトモキが向き合いたいのはいつだってホックではなくケイコだったし、ケイコと向き合いながらスマートにホックを外してやりたいのだ。今日も時間切れ。ケイコがくるんと後ろを向いて猫背になる。不甲斐なさと愛おしさを感じながらトモキはホックを外す。雨が降っている。しばらく止みそうにない雨だ。天井に、ボンネットに、フロントガラスに当たる雨音のせいで、声が遠い。ケイコの乳首を優しく吸い上げながら、もっと、もっといろんなことがうまくできれば、とトモキは思う。ケイコはトモキの旋毛あたりを見下ろしながら、昨日酔った勢いで駅前の絵描きに描いてもらった似顔絵を部屋のどこに飾ろうか、ぼんやりと考えている。雨音が強くなる。トモキが服を脱ぎ、車体がすこしだけ揺れる。