シークエンス7

  • 0122 冬

    冬

    キャッチボールがしたい、と恋人に話すと
    買ったよ、とこちらを見ずにひとこと。
    なにを?という顔で、首をかしげて眼を見ると
    わたしの目の前にスマートフォンをかざして、
    メル
    カリとさらにひとこと。
    それが先週の話で、届いたグローブ
    には油性ペンで「たくと」
    「たくと」はかび臭い。古き良きクソみたいな
    におい。
    お互いの鼻に「たくと」をあてがって、クソみたいにげらげら笑い合った。
    わたしのグローブには「しょうま」これも油性ペンこれもメルカリ。
    「しょうま」がわたしの家に届いたのは、いつだったっけかな、そう、
    まだわたしが京都にいて、
    国だか行政だか、
    古き良きクソみたいな場所から送られてきた朱色の封筒を、
    開
    けられずに、ネタとして職場に持っていったころだったはず。
    督促やろこれはまだ大丈夫やわ。
    焼却炉みたいにデカイ図体 コックさんに
    眼差しで殴り殺されてひとこと、
    でも封筒を開
    いたら差し押さえで、
    これはたぶんあかんわ、思いのほかやさしくて、それはコックさんの話。
    そのころのわたしにはキャッチボールをしたい別の人がいて
    その人もメルカリだったから「  」とどこかしら、書
    かれていたはずなのだけど、
    その話はしたのだっけなしたのだろうな。
    油性ペンなら消えない。趨勢ならどうかな。
    話の尾ひれもパッチパチに輝いて
    くっついて消えるだろうなボールはグローブに吸い込まれていくから
    その現象を真
    実にするために眼で追っていく。夜だった。
    そのころからの「しょうま」だったから、かび?って顔して、においだってしない。
    土曜日
    天気がよかったらしようよ。
    言われて、天気予報を見るのが仕方のない
    降水確率が絶望的で。もうこれはあれやろ。
    恋人はわたしの目の前にスマートフォンをかざして、
    ぼくのは雪だよ。
    ほんとうだ。
    それがおとといの話。
    やわい風で容易になびく雪
    を
    前景に
    後景
    に、
    吸い込まれていく。
    その現象を真実にするために眼で追っていく。