空想を呼び声として、

  • 0126 光景/後景(5)

    光景/後景(5)

    「小学生。いや中学、うーん?高校かもな……」
    「うん」
    「洗濯物をさ、実家で暮らしているから、からっていうのも変だけど、から、母親が洗って干して畳んでくれるじゃん」
    「まあ家庭にもよると思うけど」
    「うん。まあ……そうね。うん」
    「ほいで?」
    「いやあでさ、シャツのボタンとか……あ、高校生のときだわ思い出した。制服のシャツだったな」
    「お前うしろ。自転車」
    「ああ。……えっとなんだ。そうシャツを」
    「うーわなにあの人だかり」
    「え」
    「車道を。あーデモね」
    「なんのデモだこれ」
    「なんだろね。こういうのって大抵、言いたいことがあるのに伝え方が下手すぎてただ衆愚を晒しているだけって感想しか湧かんわ」
    「感想が湧くだけ大したもんだよ」
    「で、なんだっけ」
    「え、なに」
    「いや、洗濯物がどーたら」
    「あ、はいはい。なんだっけ。あそうそう」
    「香水くせえ!んだこのにおい。あごめん、そいで?」
    「シャツとか、ボタンついてる服とかさ、干すときにずり落ちたりしないためなのか、畳みやすくするためなのか、いくつかボタンがとまったまま畳まれていたりしてて」
    「あーまあそうよな」
    「これも家庭によるんだろうけどさ。うちの母親はそんな感じだったわけ。んで当時の俺はそれがむちゃくちゃ嫌でさ」
    「なんで?」
    「めんどくさいじゃん。いちいちボタン外して着てまたボタンつけるの。まあほんの一手間なんだけどさ。一手間がむちゃくちゃ嫌な、それはそれは生意気な高校生だったわけですよ。遅めの反抗期ですな。だから畳まれているときに、」
    「うわーここ空きテナントになっとる……」
    「キレてたわけですよ母親に。めんどくせえことすんなと。朝メシに焼き魚が出たときなんかも、骨がめんどくせえと。遅刻させる気かよと」
    「それはお前の起床の匙加減だけどな」
    「でもなんか、大学入って、一人暮らし始めて、いまもじゃん?もう、そろそろ長いよひとりが」
    「んまあ長いっちゃあ長いな」
    「料理とかさあ、洗濯とか、なんかいろいろ答え合わせみたいなことが起こるわけですよ。ボタン、干すときつけたりするよね。と。焼き魚、いうて焼くだけだから案外手軽なんだよな。と」
    「うるっせえなさっきから拡声器が」
    「なんか、そういう些細すぎることばかり、思い出しては母さんに謝りたくなるときが、あるよ」
    「あのときはっ!!!!ごめーーーーーーーーーーーーーん!!!!!」
    「んだよ急にうるっせえな」
    「いやマジでうるさかったから、デモが。対抗しようと思って」
    「闘争に別の闘争心で闖入するんじゃないよ」
    「えっまじか」
    「え。あ、うわー」
    「めっちゃ並んでんね。めずらし」
    「まあ……。でも、もうラーメンの胃になってるし」
    「並びますか……」