名付けたものどもを追う道筋を歩きながら、

  • 0060 カーセックス(10)

    カーセックス(10)

     一枚、一枚、手札を減らしていきながら、タブチからワゴウへ、ワゴウからタブチへ、ババが移っていく。いつ終わるんだろうこの渋滞は。おれは考えるのをやめたとワゴウが言ってジョジョだとタブチが言う。ジョジョだねとワゴウが言って二部だ二部だとタブチが言った。海老名SAを出てすぐに、進む時間より停滞する時間が長くなって、タブチはダッシュボードに入っているトランプを取り出した。ババ抜きだババ抜きだ。カードを丁寧に切って、半分をワゴウへ渡して、最初から揃っている札は後部座席に投げ捨てる。タブチからワゴウへ。ワゴウからタブチへ。ババが移動したら、ババを引いた側は相手の嫌なところを言う。数札や絵札を引いて、札が揃えば、後部座席にカードを投げ捨てながら、相手のすきなところを言う。堂々と爪を噛むところ。道端のカマキリをしばらく追っていたときの静かさ。わずかに進む車。洗濯物を干したあといつもちょっと誇らしそうにするところ。すぐハーゲンダッツを買うところ。親指の細さ。靴底が分離するまで同じ靴を履き倒す習性。プラスチックのコップへの執着。わずかに進む車。駅員さんになにか尋ねるときの仕草のすべて。筆跡。まめにバックアップをとるところ。苦手な人やものに対して、すきになろうとしないところ。わずかに進む車。世界史の教科書と地図帳だけは持ち続けているところ。金髪だったときの似合わなさ。ハンコを押すとき唇を噛みしめる癖。トイレットペーパーシングルへの敵意。朝の第一声。わずかに進む車。背筋の良さ。嘘笑いのほんとっぽさ。わずかに進む車。不調を悟らせまいとするときの踊り。わざわざゼロ距離で笑おうとするとき。わずかに進む車。わずかに進む車。速度を上げる車。