そのときどきで思い思いにアンカーを打つ。

  • 0005 まあまあでかい玉

    まあまあでかい玉

     まあまあでかい玉が俺んちに届いた。まあまあでかいから階段大変だったでしょう。へえいや、まあ。みたいな短いやりとりを配達員と交わしてそれを受け取った。Amazonのマーケットプレイスで送料別780円だったのを衝動的にカートへ入れて、その勢いのまま注文してしまったのだった。マケプレお急ぎ便だったから昨日注文したものがもう届く。しかもほぼ裸の状態で、剥き出しの玉として。過剰包装もどうかと思うけどさ、玉をさ、包み隠さずっていうのもさ。もごもご独り言を言いながら玉を転がしてひとまず窓際に落ち着かせた。以前、同僚に教えてもらったカメラアプリを立ち上げて、まあまあでかい玉を撮ってみた。なんだか見栄えの良い写真になった。Instagramか、Twitterか、それともFacebookか。そうだmixi、と俺は思い至る。しばらく使っていなかったレッツノートを起動させて、Firefoxのお気に入りからmixiのログイン画面に進んだ。もう最後に開いたのがいつなんだかさっぱり思い出せないmixiには意外とちらほら人がいて、誰に見せるつもりもありませんが、みたいな伸びやかな日記が、すっかり疎遠になってしまった人々によって書かれていた。俺はまあまあでかい玉の写真を日記の投稿画面に貼り付けて、タイトルに『まあまあでかい玉』と打ち込んで更新した。その直後に小さな地震があって、俺の住むアパートは築50年の木造だから景気よく揺れて、まあまあでかい玉もすこしだけ動いたような気がして、だから俺は、無性にさみしくなって、玉、と呼びかけてみた。まあまあでかい玉は窓からさす陽の光に照らされて、鈍く輝いていた。それだけだった。