0092 錦松梅

錦松梅

 わたしの住む国で、国旗を燃やすことが罪になるような決まりができても、それはあるひとつの現実世界での話なので、例えば別の現実世界、文章の中で国旗は燃える。文章の中でも罪になるのなら、またさらに別の世界で。その証拠に、いまわたしの瞳の中で、旗は燃えている。燃えている旗を宿すわたしの瞳が、わたしの瞳の中の熱に焼かれそうになっても、わたしの瞳は火種としてのその旗を宿し続ける。その火で暖を取ることだってできるかもしれない。燃える旗が、ほろほろと崩れ、細かく砕け、火が小さくなり、さらに砕け、粉のようになり、錦松梅のようになっても、わたしの瞳の中にある、その、旗だったもの、火だったもの、熱だったもの。錦松梅って知っていますか。調べてみてください。美味しいですよ。