
転送
トイレットペーパー回る卯月かな
ガムの味はなくなり電気冷蔵庫
噴水を離れ噴水完成す
ゼリーくずしても頭の痛い午後
自転車は押しても進む聖五月
ローソンにアイスカフェラテ緑差す
瞼には毛が生えており花潜
瞬きは瞳をかくし梅雨の星
死にたくて魚に豊かと書いて鱧
親指は内側にある蛍狩
空腹の胃に落ちてくるパイナップル
病院の壁に画鋲は錆び日陰
────をてんとう虫が歩いてく
卵液の黄つややかなる深川祭
人というきまりのなかで盆踊り
はは、はなお、おなら、らんぷや墓参り
つぶれてもしゃけは見えない塩むすび
桃色の絆創膏や草の花
秋茄子を包める水に流れあり
テーブルにパン台風の目の過ぎつ
イヤホンを挿して九月の窓に泡
人なれば雨は持てない花野かな
雪迎えアクアリウムに光あり
歯切れよくクッキーの割れ夜なべかな
柿羊羹留守に電話をしてほしい
氏名欄空白にして返り花
この約束破るだろうな日向ぼこ
街はまた街くりかえす神の旅
指紋浮くガラスの窓に山眠る
ポケモンの名前考え一茶の忌
前腕のレントゲン撮る年の内
ぽんかんを剥いて築三二年
雪起し餃子の底の一日かな
便器あり便座のあって梅早し
えいえんとえんえんの間に浮寝鳥
去年今年道を歌えばたどり着く
初風にぜんぶを初と名付けたり
春永や飛車角落ちの一手かな
うつうつとシンクを磨きあたたかし
ファミレスでバンドを組んで春の波
植木市手足短きぬいぐるみ
犀星忌ひとりの日向ありにけり
一年は影をなくして燕の巣
春キャベツいつも写真にいない人
朝顔蒔く翌年も蒔くことになる
翌る日もただあってただ咲く桜
肉だねのりゅうりゅう白き日曜日
アスパラガスまっすぐ茹でる三回忌
光っては遠くに二人静かな
遠ざかる背に春光をふと見たり
中野愛菜(なかのあいな)
1997年生まれ。
趣味は換気とiPhoneのデータ容量をちまちま減らすこと。
右利き。
