0022 カーセックス(6)

カーセックス(6)

 ババがタナカのみぞおちを裏拳で潰すように叩いて、タナカは笑い転げているかのように身体をぬらぬら揺らして苦しんでいる。タナカの口からよだれが垂れて、街明かりに照らされて光っている。ババはそれを見て綺麗だねえと言いながら今度は背中に肘鉄を入れる。ごめんぬう。絞り出すように言うタナカのほうをババは既に見ていない。窓の外を眺めて、顔に光が当たって、目を細めて、違う、こんなふうに嘘っぽい仕草をしたいわけじゃない、と思い直して深く息を吸って吐いてババは自分の足元を見つめる。タナカはえずき出していて、車内に酸っぱいにおいが広がっていく。ババは花粉症だからそれに気づかない。窓を開けて煙草に火をつけて、2度ほど吸ってから、赤く鈍く光る煙草の先をタナカの耳の中に押しつける。